キャリアアップ助成金(正社員化コース)の要件と申請の流れ
最終更新: 2026-09-05
契約社員・パート・派遣社員を正社員に転換したときに使える、雇用関係助成金の中で最も利用が多い制度です。ただし「転換より前にキャリアアップ計画を出す」という順番の要件があり、後から気づいても取り返せません。要件と申請の流れを整理します。
どんな制度か
有期雇用労働者等(契約社員・パート・アルバイト・派遣社員など)を正社員に転換したときに、事業主に支給される助成金です。厚生労働省が所管し、財源は事業主が納める雇用保険料です。
補助金と違って審査で採択を競うものではなく、定められた要件を満たしていれば原則として受給できます。通年で受け付けられているため、締切に追われて駆け込み申請するタイプの制度ではありません。
支給額は対象者の区分で変わり、中小企業が「重点支援対象者」を有期雇用から正規雇用へ転換した場合が最も高くなります。ここでいう正社員には、勤務地限定・職務限定・短時間正社員といった多様な正社員も含まれます。
最大のポイントは「順番」
この制度でいちばん多い失敗は、先に正社員へ転換してしまってから助成金の存在を知る、というものです。キャリアアップ助成金は転換より前に「キャリアアップ計画」を作成して労働局へ提出しておく必要があり、後から遡って提出することはできません。
つまり「正社員にしたから申請しよう」では間に合わないことがあります。転換を検討し始めた段階で、計画の提出が済んでいるかを必ず確認してください。
あわせて、就業規則等に転換制度が規定されているか、転換前後の賃金が要件どおり増額されているか、賃金台帳・出勤簿・雇用契約書が整合しているかも見られます。書類の整合性は後から作り直せないため、日常の労務管理そのものが要件だと考えたほうが安全です。
加算で金額が上がるケース
基本の支給額に加えて、通常の正社員への転換制度や直接雇用制度を新たに就業規則へ規定して転換した場合、勤務地限定・職務限定・短時間正社員制度を新たに規定して転換した場合、転換に関する所定の情報を自社サイトや職場情報総合サイト(しょくばらぼ)で公表した場合に、事業所あたりの加算があります。
制度を新設するタイミングと転換のタイミングを組み立てれば、同じ取組でも受給額が変わります。事前に設計しないと取り逃す部分です。
障害のある従業員を転換する場合
障害のある有期雇用労働者等を正規雇用労働者等に転換した場合は、同じキャリアアップ助成金でも「障害者正社員化コース」という別コースになり、支給額の水準も変わります。重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者が対象の場合が最も高くなります。
有期から正規への転換だけでなく、有期から無期、無期から正規への転換も対象になるのが、通常の正社員化コースとの違いです。
相談先は社労士
雇用関係助成金の申請を報酬を受けて代行できるのは、社会保険労務士(社労士)だけです。社会保険労務士法で定められた独占業務であり、行政書士やコンサルタントが報酬を得て代行することはできません。
就業規則の整備や賃金規定の改定が要件に絡むため、労務の専門家に相談する実務上のメリットも大きい制度です。自社が要件を満たすか、いつ計画を出すべきかは、転換を決める前に確認しておくことをおすすめします。